隕石直撃は戯言か?

.隕石直撃は現実の脅威だ
 |  探査技術の限界、Jアラート未対応…最近13年間で26個が落下
 | 警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識 その219
 └──── 島村英紀(地震学者)

◎ さる7日の夜、中国南部にある雲南省で人々が中秋の名月を楽しんでいた最
中に隕石(いんせき)が落下した。
 暗闇が急に明るくなって大きな火の玉が落下した。多くの動画や写真が記録さ
れ、その映像は中国の国営中央テレビでも放映された。
 落ちてきた隕石は小さかった。マグニチュード(M)2.1の振動を生じた。TNT
火薬540トンの爆発に相当した。2001年にニューヨーク貿易センタービルに旅客機
が突っ込んで崩壊したときはM2.3だったから、それよりも小さかった振動だった
ことになる。

◎ だが、今週10月12日昼過ぎ、はるかに大きな10~30メートルの大きさの小惑
星「2012 TC4」が地球に最接近した。地球からは約4万3500キロの距離を通る
ことが計算されていたので、幸い地球に落ちてこないことが分かっていた。
 だが、もし10~30メートルもの隕石が落ちてきたら大変なことになる。たとえ
ば2013年にロシア西南部・チェリャビンスクに落ちて爆発した隕石は約17メート
ルの大きさだった。衝撃波で東京都の面積の7倍もの範囲で4000棟以上の建物を
破壊し、1500人もの重軽傷者を生んだ。都会のような人口密集地だったら大変だ
った。

◎ じつは、地球から4万キロあまりの距離というのは意外に近い。衛星テレビ
や気象衛星、通信衛星などの赤道上の静止衛星の高さは約36000キロだから、静止
衛星なみのところを通ることになる。
 じつは9月1日に、過去最大級の小惑星が地球に最接近していた。この小惑星
は直径約5キロもあり、「フローレンス」という愛称までついていた。白衣の天使
フローレンス・ナイチンゲールにちなんだ名前だ。
 この小惑星は地球から約700万キロの距離を通った。ちなみにこの距離は月と地
球の距離の約18倍の距離だ。
 米航空宇宙局(NASA)は声明で、フローレンスについて「地球からこれほ
ど近い距離を通過する小惑星としては、1世紀以上前に最初の地球近傍小惑星が発
見されて以来で最大」としている。

◎ 最近では、大きな隕石が地球に衝突する頻度は、これまで考えられていたよ
りもずっと高いことが分かってきている。現代の私たちにとっては月見がてらに
楽しむのではすまないのだ。
 2000年から2013年の間に26個の大きな隕石が落ちてきた。この26個が地球に衝
突したときのエネルギーは、TNT火薬にして1000トンから60万トンの威力があ
った。ちなみに米国が広島に投下した原子爆弾は16000トン相当だったから、どれ
も相当な威力だった。

◎ 直径数十メートル以上の天体は、地球に接近する可能性があるものだけで
100万個もある。
 そのうち発見されているのは1万個ほどにしかすぎない。チェリャビンスクに
落ちた隕石も、落下してくるまで知られていなかった。
 いまの探査技術では将来を知るにも限界があるのだ。Jアラートも、もちろん対
応していない。

(島村英紀さんのHP http://shima3.fc2web.com/
「島村英紀が書いた『夕刊フジ』のコラム」より2017年10月13日の記事)


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